アルミ型とスチール型の違いとは? ~試作・量産を分ける金型選びの基本~

製品の開発から量産に至るまで、欠かせないのが金型(モールド)です。
特に射出成形の現場では、「アルミ型にするか?スチール型にするか?」という判断が、コストや納期、品質に大きく関わってきます。
この記事では、アルミ型とスチール型の違いを、当社の現場での経験も交えながら、実務的な観点で解説します。

1. 材質の違いからくる性質の差

項目 アルミ型 スチール型
材質 アルミニウム合金 合金工具鋼(例:NAK80、SKD61等)
硬度 低い(柔らかい) 高い(硬い)
熱伝導率 高い(冷却が早い) 中程度
加工性 高い(加工しやすい) 低い(加工に時間とコスト)
寿命 数千~1万ショット程度 数十万~100万ショット以上

アルミ型は軽くて加工しやすく、短納期・低コストが魅力です。
しかし、現場で扱う立場から言えば、メンテナンス性や耐久性に課題が多いと感じています。

2. 現場目線で見る、アルミ型の運用上の課題

当社にも「小ロットだからアルミ型で」といったご要望をいただくことがありますが、実際の運用面を考慮して、スチール型を推奨しています。
その理由は、以下のような点にあります。

・メンテナンス性の違い
 アルミ型は硬度が低いため、少し工具をぶつけただけで簡単に凹みができます。
 金型の補修や清掃などを行う際に極端に気を使う必要があり、現場のストレスが大きいのです。

・トラブル対応時のリスク
 成形中にトラブルが発生し、成形機に金型を乗せたまま対応することがありますが、アルミ型は非常にデリケートなため、作業の自由度が限られます。

こうした現場のリアルな声からも、たとえ小ロット生産であっても、安定稼働・メンテ性を優先するならスチール型の方が圧倒的に扱いやすいと考えています。

3. コストと納期の違い

項目 アルミ型 スチール型
製作コスト 安価 高価
納期 短い(数週間) 長い(1~2か月以上)
修理・改造 容易だが傷つきやすい 難しいが耐久性高

確かに、アルミ型は初期費用が安く、短納期で製作できるため魅力的に映ります。
しかし、「コスト重視」でアルミ型を選んだ結果、運用現場での工数やリスクが増え、結果的にトータルコストが高くなることも少なくありません。

4. 成形品質と耐久性の違い

・スチール型は高い精度と寸法安定性を長期にわたって維持できます。

・アルミ型は摩耗や変形が早く、ショット数が増えると成形品のバラつきが目立ちやすくなります。

5. どちらを選ぶべきか?

目的や予算によって選択は変わりますが、当社としての基本スタンスは以下の通りです

状況 推奨金型 理由
形状確認など初期試作 アルミ型 スピード・コスト重視
少量生産だが安定稼働を求める スチール型 メンテナンス性・信頼性重視
中~大ロット量産 スチール型 長寿命・高精度維持

金型選びは「価格」だけで判断せず、運用面・メンテナンス性・トラブル対応といった、現場での扱いやすさも大きな判断基準になります。
 ・安くて早いアルミ型か。
 ・長く使えて安心なスチール型か。

目先のコストだけでなく、実際に使う現場の声を反映した選択が、製品開発の成功と安定生産の鍵を握ります。